縹グドラべトン補論
あらためてグドラべトンの強さとは
「なぜか強い」とされてきたグドラベトン
従来のグドラベトン評:グドラの高耐久+1エネ起動が強い
グドラべトンがじわじわ差を詰めていける理由として、従来は「高耐久・弱点なし・1エネ起動でポケセン相性◎」のグドラがベトン付きで堅いから、という説明がほとんどでした。もちろんその通りなのですが、これはカードパワーの評価に終始しています。
事実として起こっていることは同じですが、それをどの観点で捉えるかによって構築の方向性やプレイングの選択肢が変わってくるでしょう。本稿ではより鳥瞰的に、「それによってゲーム上何が起こるか」まで切り込んで行こうと思います。
本稿での注目点:”受け”が手得につながる
グドラべトンの強さを支えるキーカード
ポケモンセンター
ベトベトン
リサイクルエネルギー
最近までグドラべトンの構築に入れていませんでしたが、「受けが手得につながる」ことに気づいて以降は必須のカードだと考えています。
元々は、「グドラは1エネ起動だからポケセンでエネがトラッシュされようとエネ管理はプレイングでどうにかできる」と考えていました。実際なんとかなります。しかし、このカードを採用すべき真の理由は、「グドラを逃がすためのエネが常に手元にほしいから」です*1。
先述のように受けで手得をするためには、すぐに手負いのポケモンにポケセンを使うのではなく、逃がしながら戦線を維持してポケセンのタイミングをはかることがカギになってきます。リサイクルエネルギーは逃げエネで切ってもポケセンで飛んでも手札に戻るため、このような動きを最大限に助けます。中終盤にエネだけのために山を掘るリスクを回避できるのも大きな効果で、さすがにここまでプレイングだけでカバーできないでしょう。また、常に手札に回収できることで、プレイングの幅を広く持てることも魅力です。
「縹グドラべトン」について
縹グドラべトンのコンセプト(振り返り)
ここまでグドラべトンの強さをあらためて振り返ってきましたが、「グドラべトンのどこを補強すべきか」にフォーカスしてつくったのが縹グドラべトンでした。
このデッキについては上記記事でくわしく解説していますが、要点だけ簡単にまとめます。
まず大事にしたのは、グドラべトン本来の強さを損なわない構築にすること。よって、強力な回復カードであるポケモンセンターや、長期戦を戦う上で欠かせない夜の廃品回収を厚めに積むなど、グドラべトンでは定番のラインナップが多めになっています。 しかし、この構築段階では「受けが手得につながる」という発想はなく、リサイクルエネルギーは不採用でした。
この中で求めた特色は、グドラべトンの弱みである序盤に強い動きができ、中終盤にもアクセントをつくることでした。カスミのゴルダックラインは2ターンでHP50を倒すねらいを持っており、中終盤にもグドラにない打点で活躍機会が見込めます。また、ハナダシティジムで逃げゼロになること、「エクストラビーム」のエネ全トラのリスクはグドラの低コストがカバーすることが使いやすさを助長しています。
縹グドラべトンの実際
まず、当初のコンセプトはおおむねうまくいきました。先攻であればカスミのコダック→カスミのゴルダック+突風でテンポをとり、そのまま押し切ってしまうこともしばしば。
後攻だとカスミのコダックで殴る選択肢を取りづらいことが多くありましたが、別に通常のグドラべトンの進行をたどっても不満はなく、カスミのゴルダックは中終盤でも見事に活躍してくれました。
そして使っていくうちに、先述のようなグドラべトンの強さが見えてきたわけです。それに気づくヒントとなり、また知らないうちにその強さを強化していたのがカスミのゴルダックでした。
HP70の壁、軽い逃げ。アタッカーとしてバトル場で威張り、手負いになったらベンチに下がってポケセンを待つ動きは、アタッカーではないシードラにはできません。手負いでも、エネを貼っておけば死に出しで40点出せるのも心強い。
仮にベンチに引っ込んだカスミのゴルダックが呼ばれて落とされたとしても、こちらはグドラへの攻撃が1回減るので必ずしも悪い展開ではありません。
さらにこのデッキにはベトベトンというHP70の壁があり、HP50のたねポケモン(タッツー、カスミのコダック)も場合によっては壁となりえます。
ただ一方で、ベトベトンが時間稼ぎに狙われやすいなど、グドラべトンのもつ弱みの多くは依然として抱えたままでした。これについて、2020年環境を分析しつつ、勝つのが難しいデッキを挙げながら次節で解説します。
2020年環境とグドラべトンの苦手デッキ
逆指名4投型
2020年の旧裏は、殿堂を問わず複数積まれた逆指名が威力を発揮する環境でした。なかでも、2ターン目から50点前後を出しに行く速攻デッキや、わるいクロバットラインをからめて打点を増すデッキ、トレーナーロックから入って優位性を拡大しにいくデッキなどは、逆指名を4投しやすい逃げゼロメインの構築で猛威を振るっていた印象があります。元々グドラべトンに強いとされているスライも時々見られました。
こういった逆指名4枚を効果的に使うことを前提に組まれているデッキ相手では、サイド4枚が逆指名で脅かされることを念頭に置いて戦う必要があります。特に特殊能力にあまり頼らない相手(エネエネにはべトンが間に合いにくい)に対しては、のんびり受けているようではリソースが十分にあっても逆転までサイドレースが間に合いません。
耐久面においても、ベンチに下げた手負いのポケモンが狙われやすいため、ポケセンを早撃ちせざるをえない状況が多くなってしまいます。その状況で、毎ターングドラ確2打点(50点以上)を出されては戦線がもたないため、相手の完成盤面をなるべく維持させないようなプレイングが必要になります。
縹グドラべトンなら、カスミのゴルダックで序盤から圧力をかけて主導権を握りにいく展開も目指せます。ただ、先攻をとられると苦しいこと、相手と比べて序盤に強いカードや攻撃を意識したカードが多くないことから、理想盤面の実現可能性は相手よりだいぶ低いです。
超耐久型(くすぐりギミック積み)
くすぐりマシーン+にせオーキドはかせの「くすぐりギミック」が入りやすい環境では、グドラべトンは「耐久型」には区分しにくいでしょう。最初からLOの勝ち筋も視野に入れているデッキに対しては、グドラべトンは耐久戦でジリ貧です。あえて型に分類するなら「カウンター型」でしょうか。
2020年は新殿堂環境で「鋼ラッキー」の活躍が多く見られました。また、ハガネールも、炎などの苦手相手以外では強いことが時折示されていたようにも思います。
こうした鋼エネで要塞化する相手に対しては、「だくりゅう」の打点が雀の涙ほどにしかならないため、「たつまき」の上振れを狙うしかありません。しかし、ポケセンが使いにくくなるうえ、狙いが見え見えになるため、かなり勝ちにくいと言っていいでしょう。
縹グドラべトンなら、カスミのゴルダックの「スーパーデストロイ」でエネをはがす選択肢も持てますが、これも結局コイン次第です。
また、要塞化されないまでも、HPの多いたねポケモンが多いとサイド6枚奪取が果てしなく遠いです。もたもたしてるとくすぐりギミック圏内に入ってしまいますが、急いだとしても有利な展開に持ち込みにくく、2020年環境で最も苦手な部類と言っていいでしょう。
高HPたね+回収入り
これは超耐久型以外にも採用が見られるので別項での解説です。ポケモン回収が使いやすい環境ではこの組み合わせが強力で、これもグドラべトン同様「相手の攻撃機会を結果的に減らせる」戦術なのです。
他のデッキの主戦より弱い火力で戦うグドラべトンがサイドレースで勝つうえで、ポケセンをはじめとしたサポート札で生まれる「相対的な攻撃機会の増加」が生命線となることは先述の通りです。度合いは劣るとはいえ、相手にも同様のことをやられてしまってはこちらの攻撃機会が足りなくなってしまいます。
また、こうした壁+回収のデッキでは、前述の超耐久要塞や、高打点の重量級エースを育てる狙いがあることが多いです。前者については前項で解説した通りですが、後者についても、グドラをワンパンできるようなカードが出てくるようならかなり苦しいでしょう。
呼び出し+特訓ジム入り
グドラべトンの最も大きな弱点の一つが、べトンが呼ばれて縛られやすいことでしょう。ヤミカラスロックは言うまでもないですが、単にバトル場に呼ばれるだけでもテンポロスになることが多いです。突風や逆指名なら”使わせた”ともとれるので悪くはないですが、拡張ピッピやタケシのマンキーの技で呼ばれ続けるのはかなり苦しい展開です。
それを嫌ってべトンを出さない選択はもちろん賢明なのですが、エリウツデッキなどではべトンを出したあとにピッピを出されて痛い目を見ることがあります。相手のデッキ構成を予想したうえで「べトンをいま出すべきか」考えるというプレイングの問題に回収されそうですが、要注意ポケモンとして挙げておきたいと思います。
また、逆指名が猛威を振るう環境で採用が増えたのがロケット団の特訓ジムで、グドラべトンもこの影響を被ってしまうことになりました。呼び出されたべトンを、3エネも切って逃がすかどうか。入れ替え札を今使ってよいのかどうか(後々のヤミカラスのリスク)。かなり難しい判断を迫られると思います。ただ、見られたのは多くて2枚採用だったので、こちらもスタジアムを2枚採用すれば少しは対策できるかもしれません。
なお、少し本題からそれますが、呼ばれたべトンが拠点にされるという意味では、ファンクラブポリゴンも忘れてはいけない要注意カードです。「ハイパーテクスチャー」でグドラのタイプが変えられてしまうと抵抗力(ー30点)で技が通らないようになるうえ、HP50なのでグドラでワンパンしにくい相手になります。
カスミのゴルダックならプラパ1枚でワンパン圏内にできますが、ちょうどよくそうさせてくれる盤面にはなっていないはずなので、やはり難しさは残ります。
その他環境カードに対して
2020年はコダックやゴースといった序盤のトレーナーロックも猛威を振るいましたが、先攻ロックを決められてしまってはどのデッキも苦しいので、特に苦手というわけではないと思います。むしろ、ベイビィのほかに麻痺のまけるベトベターもいるので、最低限の対策にはなっているはずです。あまりに多いようならえんまくタッツーの採用も検討するかもしれません。
ハンデスに関しては、耐久札があるぶん他よりマシでしょうか。先1ミニスカなどはどのデッキでも回避するすべがないので考えないことにします(先1ミニスカおたけびは犯罪)。
デッキ改善の検討
逆風の環境ながらチャンスあり
べトン不要論について:ピチューは代用になるか
以上を踏まえて縹グドラの改案
in
1 リサイクルエネルギー★★2 ポケモンぎゃくしめい★★out2 突風★★★★1 基本水エネルギー(★は新殿堂の殿堂ポイント)
前述のように、確かに環境は逆風ではありますが、「この戦型でまだまだ勝負になる」というのが私の結論です。
縹グドラべトンでは、2枚の突風が要所で働き、序盤のリードや終盤の巻き返しに寄与していました。しかし、リサイクルエネルギーの採用*3で突風が1枚になってしまうと、どうしても反発力に乏しく、カウンターが間に合わない傾向がありました。そこで、より殿堂が軽く、トレンドでもある逆指名の採用を検討しました。
逃げの重いべトンがいるデッキでの採用は意外に感じるかもしれませんが、べトン以外はバトル場に呼ばれてもあまり困りません。グドラは1エネで動けますし。
もちろん使うタイミングは突風より限定されますが、以下のように相手の手に乗って使うことを想定しています。
①べトンがバトル場に呼ばれたとき、べトンを逃がしつつ標的を呼ぶ
②きぜつの際、あえてべトンを前にして標的を呼ぶ